作品全体に広がるどんよりとした雰囲気が好き
久しぶりに東野圭吾の本を読みました。前回読んだのはもう2年前くらいだったかなぁ。本当に久しぶりに読んだっていう感じです。今回久しぶりに読んだのは”プラチナデータ”という作品。
この作品に限ったことではないんですけど彼の作品のスタイルは好きなんですよ。表現するのはちょっと難しいんですけど、作品全体にどんよりとした黒い闇のようなものが流れているような感じ。そのちょっとした不気味さの中で人物や事件など淡々と描かれているんです。そういうのが不思議と心地良いんですよ。
もちろん不気味なだけじゃなくて時々ものすごく幻想的というか不思議な描写が現れたりするんですが、それがまた際だって印象に残るんです。暗い不気味な現実描写と幻想的な描写がとてもよく合っているなって感じます。
それと視点の切り替わりが頻繁に行われるっていうことも特徴的。ずっと同じ視点で描かれてるとだんだん飽きてくるじゃないですか?でもこの作者の場合は適度なタイミングで視点が切り替わり、情景が切り替わる。今まではAさんの視点で書かれていたのに、突然Bさんの視点での物語が展開していくっていう具合です。次々と新しいシーンが現れることによって一旦頭がリセットされてるのかな。ずっと新鮮な気持ちで読み進めていくことができます。
描かれているものは今の社会を表している
この作品は書かれたのは比較的最近ということで作品で取り上げられているテーマもDNA。この作品の紹介にはこのように書かれています。
国民の遺伝子情報から犯人を特定するDNA操作システム。警察庁特殊解析研究所・神楽龍平が操るこのシステムは、現場の 刑事を驚愕させるほどの正確さを持って次々と犯人を特定していく。検挙率が飛躍的に上がる中、新たな殺人事件が発生。殺さ れたのは、そのシステム開発者である天才数学者・蓼科早樹とその兄・耕作で、神楽の友人でもあった。彼らは、なぜ殺されたの か?現場に残された毛髪を解析した神楽は、特定された犯人データに打ちのめされることになる。犯人の名は、『神楽龍平』――。 追う者から追われる者へ。事件の鍵を握るのは『プラチナデータ』という謎の言葉。そこに隠された陰謀とは。果たして神楽は警察 の包囲網をかわし、真相に辿り着けるのか。
あまり詳細を書くと内容が分かってしまうので書きませんが、色々と社会への問題提起をしているんじゃないでしょうか。特に権力というものに対しての戒めのようなメッセージが込められていると思いますね。なんか実際の社会でも表面化されてないけど、似たようなことが行われているんじゃないかって思ってしまいました。そしてそれに対してなにもできない一般市民のあきらめっていうんですかね。なんとも複雑な気持ちになりましたね。
一気に読んでしまいました
作品自体はとても読みやすくて一気に読んでしまいました。読み始めると続きが気になってしまうので要注意ですよ。