カンボジアの工場労働者が直面する劣悪な労働環境。安いモノの背景に思いを巡らせてみよう

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カンボジアの使い捨て労働者カンボジア
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先日カンボジア人の友人と食事をしている時、カンボジアの工場労働者についての話題になりました。

このページでは少しカンボジアの主に工場労働者について考えてみたいと思います。

カンボジアは遠い国だから自分には関係ないって思いがちですが、そんなことはありません。

現在のカンボジアでは縫製業が盛んで、日本でもお馴染みの会社だってカンボジアの工場で衣類を製造しています。

機会があれば今持っている服やズボンをタグを見てみてください。

MADE IN CAMBODIA

と書かれているものが見つかるかも。

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最低賃金が上がっても物価が上がり続けるから生活は良くならない

カンボジアの工場で働いている人たちの賃金を知っていますか?

2018年12月の時点では、2019年の縫製・製靴業に就いている労働者の最低賃金は月182ドルになると発表されています。

2013年9月の時点では最低賃金は80ドルだったので、約5年で2倍以上に引き上げられたことになります。

こうした最低賃金の引き上げの原因の一つは労働者の不満です。

今の賃金では生活することができない。

そういう切羽詰まった状況がストライキなどを起こし、結果として最低賃金の引き上げに繋がりました。

あるNGOが工場労働者の生活状態について調査を行った結果、このような報告がされました。

彼らは十分な栄養が摂れておらず、人間らしい生活を営むためにも最低でも150ドルの賃金は必要。

この調査は少し昔のものなので、今の彼らが150ドルで生活できるのかいうときっとできないでしょう。

カンボジアでは賃金が上がっても、物価も年々上昇しているからです。

ジェトロによるとカンボジアの消費者物価上昇率は2013年から2017年の5年間で次のようになっています。

消費者物価上昇率(%)
20133.0
20143.5
20153.5
20172.89

ぼく自身もカンボジアの物価の上昇は身をもって感じています。

特に物価の上昇を感じるのがバイクタクシーやトゥクトゥクの運賃です。

2013年にはプノンペンの中心から空港までトゥクトゥクを使っても10ドルも払えば十分行けた(6ドルで行けたこともある)のですが、2016年にカンボジアに行った時にはとてもとても10ドル程度じゃ無理って感じになってました。

トゥクトゥクなどの料金については以前はドライバーと利用者で値段交渉をして決めるやり方しかなかったので、どうしても割高になっていました。

今ではスマホを使ってトゥクトゥクなどを利用できるアプリ・iTsumoPASS APPなどが登場したので以前と比べて割安に行けるようになっています。

その他にもガソリン代や食料品も以前と比べてずいぶんと値上がりしたなという印象は受けますね。

2019年には最低賃金が182ドルになったとしても生活は相当厳しいでしょうね。

自分の給料が上がったとしても、支出も同じように上がっていくんですから。

カンボジア人の多くは月収の5〜10倍近くするバイクを所有し、日本とそんなに変わらないような価格のガソリンを買っているんです。

日本人(仮に月収が20万円だとする)が買う120円/Lのガソリンと、カンボジア人(仮に月収2万円だとする)が買う120円/Lのガソリンを比べてみましょう。

どれだけ大きな負担になるかっていうと日本人の10倍も負担になるんです。これは正直辛いですよね。

ほとんどのものを海外に依存しているから物価が高い

なんでこんなに物価が高いのか?

それはカンボジアではほどんどの製品(特に工業製品やインフラ)を海外に依存しているからなんです。

スーパーマーケットに行くとそのことがめちゃくちゃわかります。商品棚に並んでいる商品がほとんど外国製なんです。

  • 牛乳などの乳製品
  • ジュース
  • シャンプーや石けんのお風呂用品
  • 歯ブラシや歯磨き粉など
  • 洗濯用洗剤や住居用洗剤
  • 調味料

挙げたらきりがないくらい外国製の製品であふれかえっています。

その他、車やバイクなどの工業製品も多くは外国からの輸入です。

バイクはようやくカンボジアでも作られるようになりましたが、多くはタイからの輸入です。

電気だって外国頼み。カンボジア国内にも発電所はありますが、まだまだ規模が小さいので価格が高いんです。

だからより安い外国からの電気を買っているのが現状。

カンボジアの電気はお隣の国、タイやベトナムからやってきます。

みんな大好きスマホや携帯電話だって外国製です。AppleやSAMSUN、Nokiaなんかが多い印象がありますね。

エアコンなんかは韓国のLGが幅をきかせています。

ぼくがカンボジアに住んでいた時には、カンボジアの物価ってそんなものだと思っていたんですよ。

でもタイに行った時にビックリしてしまいましたね。めちゃくちゃ物価が安いんです。

カンボジアで売られている牛乳はタイ製なんですが、タイで買うとカンボジアの半値でしたからね。

とにかくいろんなものを外国に依存しているので、いろんなものが隣のタイに比べて高いというのがカンボジアです。

工場労働者は低賃金なうえに田舎へ仕送りをしなければいけない

カンボジアの工場で働く労働者の最低賃金は2019年には現在182ドルになります。

この金額が多いのか少ないのかっていうと圧倒的に少ないです。

カンボジアでは、普通に食事をしても1食1ドルくらいかかります。

仮に会社から食事の補助がないとすると、食費だけでも3ドル、1ヶ月でも約90ドルかかります。

もちろん食べるだけは生きていけませんよね。その他にも色々と出費があるはず。

  • 住居費
  • 携帯電話代

こんなのは絶対に必要ですからね。

でも必要なお金はそれだけではありません。

彼らにはさらに大きな出費があるんです。それは地方の家族への仕送り

多くのこうした工場労働者は地方出身者で、地方にいる家族を支えるためにプノンペンまで出稼ぎにきているんです。

だから彼らは、給料を地方の家族に仕送りしなければいけないんですね。

ただでさえ収入が少なく自分の生活も大変なのに、家族への仕送りもしなければいけない。もう限界でしょ。

さらに悪いことに、こうした工場の労働環境は劣悪なことが多いんです。

労働者の中には劣悪な環境での長時間労働、栄養失調により倒れる人たちも多いと聞きます。

2015年に国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウの調査によると、カンボジア国内での縫製工場の労働環境が極めて悪いという調査結果が出ています。

カンボジア・縫製産業で違法な搾取労働が横行 政府および国際ブランドの責任が問われている。

このドキュメントからいくつか紹介しますね。

シフト制で 24 時間勤務を男性・女性労働者がすることになっているという。明らかに法令に反する長時間残業の強要に該当することとなる。ところが、こうした長時間の残業を強いられているにも関わらず、月額の支払いが 200 ドルまでになることはないという。

就業時間は午前 7 時から午後 4時までと定められているにもかかわらず連日残業を命じられ、しばしば 24 時間連続の残業もあると訴えた。しかし、6 時以降の残業代はやはり支払われないという。

労働者はこのような過酷な 24 時間残業をしばしば命じられるが、残業を断ることは事実上不可能だという。ECO Base Factory Ltd ではタイムカードのシステム上、残業をせざるを得ない状況だといい、Zhong Yin (Cambodia) B Textile Co., Ltd の労働者は、「残業を更新しなければ期間更新してもらえないという恐れがある。従うしかない。」と訴えた。

Full Fortune Knitting Ltd の労働者は、「2014 年に天井が崩れ、労働者がケガをする事故があった。今も雨が降ると雨漏りがする」と訴え、「アイロンのコンセントから火花が出ることがあり、作業中にケガをする労働者もいる」「夜間は入口 1 か所を除き、全ての扉を閉め、避難出口までが遠いため、いつも事故が心配である」「工場内の指示等は英語表記が主であり、クメール語表記がない」と訴えた。

こうした劣悪な環境で働かされる。実際にこの報告書の中では世界的な企業の名前も出てきます。

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング、H&Mなどです。

これらのブランドでどんなことをイメージしますか?

安い

ぼくはまず最初にこれをイメージしますね。

たしかに良いものが安く手に入るのはいいことです。

もちろん企業の正しい企業努力によって低価格が実現されているのだったらいいんですよ。

でも、実際にはこれって本当に良いの?

って思うようなことが現場で行われていたりするわけです。

カンボジアから遠く離れた消費者の、商品に対して過度に安さを要求する姿勢がカンボジアの人たちを苦しめているのではないかと思ったりするんですよね。

極端なことをいうと、カンボジアの工場で働く労働者はぼくたりの犠牲者とも言えなくはないんじゃないか。

異常な安さにはそれなりのワケがある。

これはなにもカンボジアに限ったわけではないけど、安さばかりに気を取られてぼくらは大切なものを見落としてしまっているような気がしてなりません。

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