カンボジアでうどんハウスプロジェクトをされている楠川富子さんの活動紹介の後編です。
前編ではうどんハウスプロジェクトやカンボジアの医療の現状などについて書きました。
後編では、実際にカンボジアで保健衛生の活動をされている現場・カンダール州での活動について紹介します。
まずはカンダール州がどこにあるかというところから。
まずは大きな地図で見てみましょう。これがカンボジア全体の地図です。
マークのついている部分が楠川さんが活動されているカンダール州の中でも南の方にある「タクマウ」という場所です。
地図をもっと拡大してみしょう。
地図の上の方にはカンボジアの首都・プノンペンがあります。プノンペンから車で約40分程の場所にタクマウはあります。
現在、楠川さんが活動されているのはこのエリアにある小学校です。
活動の現場・カンダール州の小学校で見たカンボジアの今
最初に案内していただいたのがこちらの小学校。
SAMDEC KROMPREAH NORODOMRANARIDD PRIMARY SCHOOL
「NORODOMRANARIDD」はカンボジアの政治家の名前ですね。政治家でもあり王族でもあるとのこと。
第50代国王ノロドム・シハヌークの次男で、第51代国王ノロドム・シハモニの異母兄。
ノロドム・ラナリット – Wikipediaより
カンボジアではこのように政治家や王族の名前がついた学校がとても多いんです。ここもそんな学校の一つのようですね。
入口を入るとすぐに見えたのが遊具です。でも整備ができていないようで壊れたブランコがそのまま放置されています。
鉄棒はかろうじて使えるかなといった感じ。
これはシーソーかな?
こういう状況を見ると、やはり建てるだけの支援っていうのでは不十分だと感じますね。
継続的な運営ができないと、せっかく作ったものがまったく役に立たなくなってしまいます。
学校が学期間の長期休みのため草も生え放題。おじさんが掃除してました。先生の姿はどこにも見当たりません。
奥に見える小さな小屋はトイレです。この学校は大きいにも関わらずトイレの数が全然足りません。
トイレに行けない子どもはきっと外で用を足すんでしょう。衛生面での問題は深刻です。
これが教室です。日本の学校とはまったく違った造りですね。
隙間もいっぱいなので、長期休み明けは教室中土埃まみれになってしまいます。いろんな虫なんかも入りたい放題。
学校の敷地内にたってる小屋。これが売店です。
ここで生徒たちが朝食にジュースやスナック菓子を買います。
こんな感じで簡単なテーブルやイスが置かれてました。
長期休みなので誰もいなくて閑散としています。学校が始まったら活気に満ちあふれるはず。
夜になるとドラッグのために若者が集まる小学校
この学校には残念な側面もあるんです。
それは、夜になるとドラッグをする若者のたまり場になるから。
この校舎を見てください。窓が開いてますよね。
この窓から夜になると若者が中に侵入して、中でドラッグを使うんだと楠川さんは話してくれました。
以前はカンボジアの教育支援で求められていたものは数学や理科などでした。
でも今は要請が変わってきていると言います。
今、カンボジアが求めているものは心の教育なんだそう。
薬物乱用に対して何らかの対策を講じられる人、そういう人をカンボジアは今求めていると楠川さんはぼくに話してくれました。
「前編」でも書きましたが、カンボジアでは信じられないくらい薬物が簡単に手に入るそうです。そしてその危険性についての教育もまだまだ。
絶品かぼちゃジュースはここでしか味わえない特別な味
1校目の学校を後にして次の目的地へ行く前にちょっと休憩。
カンダール州のここにしかないという絶品カボチャジュースをいただくことに。
雨期で連日土砂降り。道路もぐちゃぐちゃで大きな穴が開きまくってます。
さらに悪いことに、大型トラックがひっきりなしに通るもんだから道路の状態はますます酷いことに。
上下左右に揺られながら少し大きな道路沿いの普通の家に到着。
ここでめちゃくちゃ美味しいというカボチャのジュースを購入です。
すごくきれいな黄色をしてますね!味はどうでしょうか?
レイ
めっちゃうまい!!
カンボジアのフルーツジュースってめちゃくちゃ練乳を入れて甘すぎるのが多いんですが、このカボチャジュースはほどよい甘さ。
練乳の甘さに頼り切らず、カボチャの自然な甘みを感じさせるところが素晴らしい!
そしてキンキンに冷えているのも最高ですね。
レイ
カンボジアではじめて出会う味やわ〜
カンボジアではいろいろな飲み物を飲んできましたが、このカボチャジュースは初めて。本当に美味しい!
おばちゃんの言うように、この店でしか飲めないのかな?
そうだとしたらぼくはすごく貴重なジュースを飲んだことになりますね。
レイ
めっちゃラッキー!
この話をするとめちゃくちゃカンボジアに詳しい人のように思ってもらえるのでおすすめです。
カボチャジュースが一押しですが、カボチャ以外にも芋のジュースなど数種類ありましたよ。
残念なことに店の場所がはっきりと分からないので、自力では行けません。
場所をしっかりと確認しなかったのは痛恨のミス!
学校の先生の自宅へお邪魔しました
次の目的地は学校の先生の自宅。
楠川さんの活動は楠川さん一人だけでやっているわけじゃありません。
多くの人の協力が絶対に必要。
特に子どもの衛生教育ともなると、学校の先生と良い関係を築くというのはめちゃくちゃ大事なことなんですよ。
きっとそういう人間関係の構築という意味もあって、先生のご自宅訪問ということになったのかな?
と勝手に想像してみました。
カボチャジュースを飲みながら、幹線道路を外れて細い道に入っていきます。
カボチャジュースのボリュームが大きすぎて、この後もプノンペンに戻るまでずっとジュースを飲んでました。
カンボジアと言えばこの景色!という田舎の風景が目の前に。
レイ
この景色好きやわ〜
こんな景色をたっぷり楽しみながら数分で先生のご自宅に到着。
家に到着すると先生をはじめ、家族みんなで迎えていただきました。
カンボジアの人たちって初対面の人にも親切にしてくれるんです。そういうところがすごく好き!
カンボジアは首都のプノンペンでは近代的な家に住む人も多いんですが、田舎の家はまったく別物。
家の中に牛がいたり。
2頭も!
ここは牛舎でもなんでもないんですよ。家の中。台所の裏に牛!
雨水だって有効利用してます。屋根から這わしたパイプを通って雨水を集めます。
それを瓶の中にためておきます。ここに貯めた水は飲まないと思いますが、洗濯や草木の水やりに使うんでしょう。
ちゃんと井戸もあります。こっちは飲み水用ですね。
トイレも見せていただきました。こんな感じで屋外にトイレだけ設置されています。
中には便器と水槽があります。用を足したら水槽の水で流します。
外側に回ってみると、トイレの裏にこんなコンクリートのフタのような物がありました。
トイレの裏に大きな穴が掘られていて、トイレで流したものはすべてこの穴に入るようになるんだそう。
日本でも昔はこんなものがありましたよね。
ぼくが昔住んでいた家にはこんな穴があって、月に1回くらい業者の人がくみ取りに来てたのを覚えてます。
下水道がほとんど整備されていない田舎ではこういうトイレが一般的。
レイ
穴がいっぱいになったらどうするの?
こんな疑問が浮かんだので質問してみました。
返ってきた答えは…
新しい穴を横に作る。
レイ
な、なるほど…
この穴は大きいので1年以上使ってもいっぱいにならないんだそうです。
これなら庭が肥だめで埋め尽くされることもなさそう。
庭の裏には鳥。かわいい♪
さらに食事までご馳走になってしまいました。これは餅米の中に豚肉を詰めて蒸し焼きにした料理。ノム・ソム。お盆でよく食べられる料理です。
お母さん
たくさんおたべ
レイ
ありがとうございます!
めちゃくちゃ食べまくったらお腹がやばくなりました。
餅米なのでめちゃくちゃお腹が膨れます。食べ過ぎ注意!
さらにこんなおやつも。
餅をゴマなどと混ぜて乾燥させたものを油で揚げたおやつです。
ほんのり甘くて美味しい!日本のおかきのようなお菓子。
楠川さんと一緒に楽しいひとときを過ごすことができました。本当に生き生きされてますね。
諦めずに継続することで周りの人も変わってくる
先生のご自宅を後にして、次に向かったのはこちらの小学校。
この小学校では実際にうどんハウスプロジェクトとしてトイレを建設されました。ナカムラさんの援助と書かれていますね。
壁には手洗いのことについてのイラストが掲げられています。
イラストをふんだんに使って子ども達に分かりやすいように工夫されてますね。
こちらがトイレ。
男性用も隣に設置されています。
トイレのすぐ後ろを見てみるとバナナの木が植えられていました。
実はこのバナナは楠川さんたちが植えたものじゃないんです。
このバナナを植えたのは学校の先生。
楠川さんはこう仰いました。
楠川さん
私たちがずっと通い続けているうちに先生達も協力してくれるようになった
楠川さんたちがこの学校にトイレを建てるだけで、この学校に通い続けなかったらどうなっていたでしょうか?
きっと他の学校のようにトイレは使われなくなるか、故障して使い物にならなくなります。
まして、先生達がトイレをもっときれいに使えるようにしようって思うことはなかったんじゃないかな。
先生達だって分かってるんです。
物を作るだけで二度と来ない人より、物を作った後もずっと自分たちに関わり続けようとしてくれる人の方が良いってことを。
やっぱりここでも継続する支援が本当に大事なんだって実感しました。
バナナを植えた後も先生たちは環境改善を実行されています。
例えばこれ。ここは学校の裏手になるんですが、生徒たちが良い環境で過ごせるような設備を作るそうです。バナナも植えるみたい。
なんか良い循環が生まれているようで嬉しいですね。
小学校の一角に開設された保健室では退職した教員が健康指導
最後に訪れた小学校がこちら。この学校にうどんハウスプロジェクトの「保健室」があります。
保健室を見たいと意気込んでいたら、長期休みのため門が閉まっていて中に入れないというまさかの事態。
レイ
マジか…残念
中が見られないと諦めそうになったところ、学校の先生に電話したら開けてもらえることに。先生ありがとう!!
これが小学校。広い校庭のある大きな学校ですね。
そしてここが保健室です。学校が部屋を1つ提供してくれたんだそうですよ。
保健室の中には衛生教育のための教材がたくさん壁に貼られています。
そしてこの保健室には、学校を定年退職された先生にお願いして来てもらっているそうです。
せっかくの保健室も誰もいないと利用する子どもにとっても良くないですしね。
そしてこちらがうどんハウスプロジェクトで建てたトイレです。
この学校も生徒数に見合ったトイレがありませんでした。
外で用を足す生徒が多いということで新しいトイレを建設されたんだそう。
こっちは女性用のトイレですね。隣には男性用トイレも。それぞれ1つずつ設置されています。
ただ、まだまだトイレの数が足りないそうで追加で建設したいとのことでした。
まとめ
前編・後編と2回に分けて、カンボジアで保健衛生の活動をされている楠川富子さんの活動について書かせていただきました。
楠川さんの思いは、「カンボジアの現状を良くしたい」というもの。
日本の生活をすべて捨てて単身カンボジアへ。
そしてたった1年という短い時間でこれほどまでに様々な活動をされている本当に熱い方。
それにも加えて、大学との新たなプロジェクトも2017年に始まることが決まっているとのこと。
楠川さんの言葉でとても印象に残ったもの。それは
臨床からカンボジアの子どもたちのために働く
カンボジアの現状を良くする。これには色んな方法があります。
教育から、司法から、経済から。
本当にいろんな人たちが色んなアプローチでカンボジアの現状をよくしたいと働いているんです。
楠川さんは臨床(現場)から子どもたちの健康を守るために活動されています。
ぼくもできる限りのことをしていきますよ。ぼくの場合には「食べる」ことから健康な人を増やしていきたいな。
随分長くなっちゃいましたけど、これでおわり!